2014年08月23日

シミュレーションする心 ---- 「もし、○○○ならばどうなるか」

たまには、末端のエンジニアとしての記事を書きます。

 少し以前、ある集まりで弊社の技術を紹介する機会を与えていただきました。
しどろもどろの拙い説明の後の質問の時間に、かなり経験豊富と推測される方から「SPICEは、浮遊成分などを含めて回路を正確に表しているわけではなく、私は信用できない。」というようなコメントがありました。そのときは、「高価にはなりますが、その要求に応じて解析ツールを選ぶしかないのでは、」というような回答をさせていただきました。以下のようなことが頭にあったからです。

回路分類  理論体系              代表的なシミュレータ
----------------------------------------------------------------------------
第一分類  オームの法則,キルヒホッフの法則  SPICE
第二分類  電信方程式,伝送線路理論      高周波回路シミュレータ
第三分類  Maxwell の方程式           Sonnet
第四分類  Maxwell の方程式           HFSS
第五分類  Maxwell の方程式           FDTD


引用元:「波長による高周波の分類とそれぞれの性質」
    -----高周波に取り組む前に知っておくべき概念
    有限会社ソネット技研
原文はPDFで、ここより入手可能です。
http://www.sonnetsoftware.co.jp/


 確かに、質問された方の言うとおりなのですが、今更ではありますがよく考えると何かちょっと違うという気がしてきました。

まず、回路について何らかの検討をするのであれば、基本はオームの法則やキルヒホッフの法則。どんな高尚な回路も基本の上に成り立っています。高尚なツールを使いこなすにしても、基本のツールを理解していることは、無駄にはならず必ず役立つだろうと思います。

もし、シミュレーションという行為自体に懐疑的なのであれば、少し先入観を取り払って、試してみることが必要なのかも知れません。
シミュレーションという行為の結果が、実機と寸分違わないものでなければ価値がない、と考えることは、基本的に間違っていると思います。
その理由について、詳しくは、過去記事を参照願いたいのですが、シミュレーションする最大のメリットを一言で表せば、TIの人気女性シニアエンジニアBonnie Baker氏の言葉を借りると、

「もし、○○○ならばどうなるか」というアイディアを簡単に試すことができる。

一度、モデルを含めて解析用の回路を作りさえすれば、簡単にいろいろ試せるので、想像以上に回路への理解を深めることができる筈です。これは、やってみて実感してもらうしかありません。


参考
○過去記事「シミュレーションの思想」

抜粋しようと思いましたが、記事後半部分はどれも重要に思えたので、下に再掲します。

○過去記事「SPICEを効かせる」


---------------------------------------

「シミュレーションの思想」
 広瀬 通孝, 田村 善昭, 小木 哲朗 (著)
 東京大学出版会 (2002/10)

抜粋

・試しに何かやる必要があるか否かは、ある種の価値観あるいは経済的感覚と関連する。成功確率をできる限り高めようとするために最も有効な手段が、「試してみる」ということ。シミュレーションとは、複雑な対象を管理、運営、開発するために必要不可欠な手法である。
・シミュレーションは「本番」に対する「試行」。「試行」は簡単であればあるほどよいが、あまりに簡単すぎて、「本番」において起こるであろうことを予想しきれないのでは困る。反対に本番を完全に二回繰り返すのは、明らかに非効率、不経済。
・何か事を起こすにあたり、あらかじめいろいろな案を試行錯誤することによって、最適案を吟味しておくことは大切なことである。対象が単純なものであれば、何回も実際に試してみることができるが、複雑で高価なものの場合はそうもいかない。
・効率のよい「試行」を行うためには、それが「本番」のエッセンスを含んでいなければならない。それをモデル化という。現実のエッセンスを抜き出し、単純化するということが、シミュレーションの本質であるといってもよいぐらいである。だから、シミュレーションとモデル化は切っても切れない縁がある。実物の持つ本質的な部分のみを抽出して、何らかの形の情報圧縮を行うことによって、実物よりは取り扱いやすく、安価な対象を作り上げる。これがシミュレーションを行ううえでの秘訣。
・シミュレーションとは、実物をそのまま使用しなければまったくモデル化が不可能なほど複雑な状況でもないような問題に対し有効な手法。
・一般に、抽象度を上げれば上げるほど問題は単純化し、解くことは簡単になる。しかし、その一方で現実のディテールが捨象され、真の解答からは遠ざかることになる。したがって、適切な複雑度のモデルを作り上げることが、シミュレーション・エンジニアの腕前となる。
・シミュレーションをどのくらいの精度で実施すべきか。この問題に答えるためには、じつはかなり職人芸的なセンスが要求される。規模すなわちモデルの複雑度はできるだけ小さいほうが望ましい。費用対効果という問題もさることながら、あまり細かいモデル化を行うと小さな誤差の積み重なりによって、精度が低下する場合もある。何がなんでも現実に忠実な構造を有するモデル化が最適というわけではない。シミュレーション技術の本質部分はじつはそこにあるが、それを書物によって伝えるのはなかなか難しい。
・そもそもシミュレーションという手法自体、自己矛盾的な部分を含んでいる。未知の問題を計算機による模擬実験で検討しようとする場合、その答えが正解である保証はあまりない。わかりきった問題であれば正当性を証明できるであろうが、それでは何のためにシミュレーションをするのかわからなくなってしまう。
・現実とシミュレーションの間の境界部分のどこに線を引くべきかは、シミュレーションという体系の中からは答えることができない。これは技術全般についていえる。使いこなす人間の自身の見識によってこの問題を解決していくべき。
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2011年07月08日

原発のストレステストとはシミュレーションのこと?

原発のストレステストという話が急に出てきました。このテストについて何の予備知識もありませんが、普通の人よりはコンピュータ・シミュレーションというものをわかっているつもりでいるので、少し考えてみました。

○今回のストレステストというものの危険性
真実に近づいた結果を得たいと思う中立あるいは推進に慎重派の人が参加しないとまったく意味がない。客観性がなくなる。
モデリング、シミュレーション・プログラム本体コーディングにおいて、何らかの作為が入り込めば、すぐに何をやっているかわからなくなる。

○シミュレーションの概略内容予想
1. 構造、材質、運用年数、立地環境、などをパラメータとした汎用的な原発のモデルを作成する。
2. 国内のすべての原発に対して、各パラメータを設定する。
3. 安全評価シミュレーション・プログラムを用意する。
これにはストレス項目として、地震、津波、その他気象変動、ヒューマンエラー、あらゆるテロなど。

○得られる結果と評価
先入観なしにモデル化でき、うまくシミュレーションできたとして、有効な結果として得られるのは、絶対評価ではなく、各原発の相対的な評価結果程度ではないかと思われる。つまり

「国内でどこの原発がもっとも安全性が低い。どの原発はどの項目が弱い。」

これを得ることに意味がないとまではいえませんが、「ストレステストにより安全性が確認できたので稼動します。」というGO/NO GOの判断基準にはなり得ないと思います。シミュレーションとは何かを学んで有効に活用すべきです。この議論は、飛躍すると、科学技術とは何か、どうあるべきかというところまで行ってしまうのですが・・・
関係者の方には、シミュレーション技術を有効活用し、この技術自体の価値をおとしめることのない様に、是非お願いいたします。

参考
 ・本ブログ 2009年12月14日記事 「シミュレーションの思想」 
 ・拙著 「PSpiceリファレンス・ブック」はじめにの「重要なただし書き」部分
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2010年05月05日

数学は科学ではない

数学という抽象概念を学ぶ価値は、物理をはじめとするその他の学問において、理論を展開するための手段として必要だから。目的ではなく手段の学問。

とは私がぼんやりと考えたアホな理論だったのですが、ファインマン博士もニュアンスが同じようなことを言っていたのにはびっくりしました。

*******

我々の見方からすれば、数学は自然科学でないという意味で、科学ではない。数学の正否をためすのは実験ではない。しかし、ここでまず明らかにしておかなければならないが、あるものが科学ではないからといって、それは下らないものだとは決まっていはしない。例えば、恋愛は科学ではない。だから、あるものが科学ではないといったところで、そこに何かあやまりがあるということにはならない。単に科学ではないというだけのことである。      
  −−−−ファインマン物理学 T 力学 (岩波書店)
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2010年04月28日

マイブーム : ファインマン物理学

リチャード・P・ファインマン(Richard Phillips Feynman, 1918年 - 1988年)は、アメリカ出身(ユダヤ系)の物理学者で、1965年にノーベル物理学賞を受賞しています。受賞理由は、量子電磁力学の発展に大きく寄与した(対象論文は1950年、1951年)ということで、ジュリアン・S・シュウィンガー、朝永振一郎と同じ理由で同時受賞です。「物理学全体を彼独自の方法で組み直した新しい理論をつくり上げた」という20世紀を代表する物理学者のひとりに挙げられている天才です。

ファインマン物理学は、彼がカリフォルニア工科大学の教授時代の1961〜1962年に学部1,2年生に対して行った物理学入門の講義を、共同執筆となっている同僚の企画編集によってテキストとしてまとめられたものです。原書は3巻ですが、日本語版は全5巻(T力学、U光 熱 波動、V電磁気学、W電磁波と物性、X量子力学)となっています。
数十年前、私が学生の時、電磁気学の教科書が、これの第V巻でした。今のものはソフトカバーになっていますが、当時のものは多分原書と同じで赤の装丁のハードカバーのものです。外国でも赤本として愛読されたようです。
当時の授業では、この教科書を元に進めたわけでもなく、先生の嫌な高音ぐらいしか覚えていません。他の教科書に比べて、特に内容が面白いとも思いませんでした。

最近になって電気電子工学に関する基本的な諸々の疑問が浮かんできました。ところがそれは、工学の本にも、数学の本にも、物理の本にも、書かれていないのです。
その疑問の答えのいくつかが、このシリーズには垣間見られることに気づきました。内容は簡単ではありませんが、他の教科書などにはどこにも書かれていないこと、そうだったのかということが、書かれてあります。
それを冗長だ、詳しく説明しすぎだ、それは学生に考えさせろという意見もあるようですが、何を考えているのか。また、こんなものを教科書にしたら、学生にとんでもない質問をされるので、採用しないという場合もあるとかないとか。

このような天才が、大学1,2年生向けに行った授業の内容を書籍化したものなど他にないのではないかと思われます。長年手元にあったV巻以外のT,U,W巻をやっと入手しましたのでじっくり読みたいと思っています。

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2010年02月03日

数学についての疑問

自然科学(対比されるものとして人文科学や社会科学)を学ぶと、その記述の手段として数学を使います。数学を使わなければ、定性的な話で終わってしまいます。

しかし、数学を学校で習う場合、これはこういう意味を持っていて、このようなことに使うのですよという説明はほとんどなく(そう感じました)、いきなりこういうものがあって、こうするとこうなって、こういう問題はこうやって解くで終わっています。

自然科学の方はどうかというと、その本質的なところは、数学そのものの方で説明済みとばかりに、いきなりそれを利用します。この数式を使ってこうなんだで終わりです。

結局どちらもその数学理論の目的は何か、なぜそれを持ち出してきたのか、どこで誰がなぜ考えついたのかについては、語っていません。それは自分で考えろという方針なのか、はたまた?? 私のような怠け者は、意味もわからず小難しいことは覚えたくありませんでしたから、興味が持てないままパスしてしまいました。

いい例として挙げられるのが、微積分です。
数学のテキストをみると、微分で曲線の接線の傾きがわかるという、積分で面積や体積がわかるという。確かに便利かもしれませんが、面倒だし私はそれほど興味が持てませんでした。
ところが、時が流れ理工学などを学ぶようになると、これら自然科学の分野では、いろいろな法則は微分方程式という共通の言語で表されます。そして、微分方程式で書かれた理論による予測を、実験や観測と比較するときには、多くの場合に積分が使われます。そんなに大事なら、簡単にでもいいから始めにそう教えてくれればいいのに、といいたくなるのは私だけでしょうか。
たとえば、以下のように。


物理学天才列伝/上
(ウィリアム・H・クロッパー著/水谷淳訳 講談社ブルーバックス)より

自然界は絶えず連続的に変化している。微積分の目的は、この連続的な変化を数学的に記述することに他ならない。(中略) 微積分の方法を使うと2種類の互いに関連した問題が解ける。連続的な変化を示す式が与えられたとき、その変化率を表す式を求めよ、という問題と、逆に、変化率を表す式が与えられたとき、その変化の式を求めよという問題だ。アイザック・ニュートン(英:1643-1727)はこのような問題を解くために微積分へたどり着いた。

注)微積分の発明は、ニュートンより後に独立してゴットフリート・ライプニッツ(独:1646-1716)によっても行われた。ライプニッツの表記法(dy/dxやSを引き延ばした積分記号インテグラル∫)は、300年以上も同じ形で使われ続けている。ライプニッツとニュートンは、どちらが先に微積分を発明したかで醜い争いを繰り広げた。

注)積分記号インテグラル∫は、ラテン語の和「Summa」の頭文字Sの古い形。
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2009年12月24日

19世紀の一番顕著な事件

マクスウェルによる電磁気法則の発見

 人類の歴史という長い眼から、たとえば今から1万年後の世界から眺めたら、19世紀の一番顕著な事件がマクスウェルによる電磁気法則の発見であったと判断されることはほとんど間違いない。アメリカの南北戦争も同じ頃のこの科学上の事件に比べたら色あせて一地方の取るに足らぬ事件になってしまうであろう。

       −−−−ファインマン、レイトン、サンズ著  宮島龍興 訳
            ファインマン物理学 V 電磁気学 (岩波書店)より

そんなに大事ならもっと理解しないと・・
将来的には、あの変な逆さまの三角記号(▽)も含めて理解したいと思います。

まずは、マクスウェルの方程式を言葉を使って表すと

第1式 
  任意の閉曲面をつらぬく電束=内部にある総電荷/ε0
  ただし ε0は真空の誘電率
  これをガウスの法則という。
  任意の閉曲面から発散する電束は、内部にある電荷に比例する。

第2式
  任意の閉じていない曲面をSとし、その縁をCとすると
  Cのまわりの電場の循環=−d/dt(Sを通る磁束)
  これをファラデーの電磁誘導の法則という。
  磁束が時間変化すると、そのまわりに電界が生じる。
  このファラデーの発見により電池以外の方法で電気を発生させることができるように
  なった。今日の科学文明にとっても大きな意味をもつ。

第3式
  任意の閉曲面をつらぬく磁束=0
  これは、電荷に対する単独の磁荷は存在せず、必ずN極とS極が対になっている
  ので、任意の閉曲面を出入りする磁束の合計はゼロになることを示す。

第4式
  任意の閉じていない曲面をSとし、その縁をCとすると
  c^2(Cのまわりの磁場の循環)=d/dt(Sを通る電束)+Sを通る電流の流束/ε0
  電流が流れたり、電束が時間変化すると、そのまわりに磁界が生じる。
  マクスウェルは、アンペールの法則にはなかった右辺第1項を付け加え、電流と同じ
  単位(次元)なので変位電流と名付けた。
  マクスウェルは、この第4式と第2式から電磁波の存在を予言した。

これらにマクスウェルが加えてなかった以下の式を追加すると、それらの式に(古典)電磁気学のすべてが集約されているという。

速度v(m/s)をもつ電荷q(クーロンC)の受ける力F(ニュートンN)は
  F=q(電荷のある場所の電場E+電荷の速度v×電荷のある場所の磁場B)  これをローレンツ力という。

上記式に出てきた聞き慣れない言葉や記号を説明します。(出典は上記書籍およびウィキペディアなどインターネット情報)

電束:電場(電界)の流速。単位はクーロン。想像上の電気力線が束になっていると
   考える。
流速:閉曲面に対して、外向きの流れの総量。速度の法線成分の平均値に表面積を
   掛けたもの   
    流速=(速度の法線成分の平均値)×(表面積)
    ただし、法線とは曲面上の一点を通り、その点における接平面に垂直な線
電場:理学系では「電場」、工学系では「電界」と呼ばれることが多い。空間上に電荷が
   存在することによって引き起こされる電気の勾配。
   電束密度との区別のため電界強度ともいわれる。
   空間の各点で向きと大きさを持つベクトル量であり、磁場の時間的変化によっても
   発生する(マクスウェルの第3式)。単位はニュートン/クーロンまたはボルト/m。
電荷:物質や原子・電子などが帯びている電気やその量。単位はクーロン。
ε0 :真空の誘電率。電磁気現象を真空で考えているために使われる真空の誘電的
   性質を表す定数。
循環:流れの速度に閉曲線の長さを掛けた量と定義。
d/dt:後ろに来る数を時間tで微分する。ある瞬間における単位時間の変化量を表す。
   一般に、変化量が一定ならば単純に時間で割れば変化量が正しく求まるが、自然
   現象を考えたとき、変化が一定でない場合がほとんどのため、微分という手段が
   必要になる。
磁束:磁場(磁界)の流速。単位はウェーバー。想像上の磁力線が束になっていると
   考える。
c :光の速度。この世界で最も速い速度。光速度は電磁場の伝播速度。
   約30万キロメートル毎秒(299,792,458 m/s)。1秒間に地球を7回り半する
   速さ。
電流:荷電粒子(通常は電子だが正孔・イオンの場合もある)の移動に伴う電荷の流れ、
   もしくはある面を単位時間に通過する電荷の量。単位はアンペア。
速度:物理学では、速さと向きをもったベクトル量と考える。
磁場:電場同様、理学系では「磁場」、工学系では「磁界」と呼ばれることが多い。
   単に磁場と言った場合は磁束密度 Bを表していることが多い。空間の各点で向き
   と大きさを持つベクトル量であり、電場の時間的変化または電流によって発生
   する(マクスウェルの第4式)。
   磁石による磁場も電子の自転による循環電流によるもの。磁束密度とした場合、
   単位はニュートン・sec/クーロン・mまたはボルト・sec/m^2またはウェーバー/
   m^2またはテスラ。
ベクトル:大きさと向きをもつ量。自然界の物理量である力・速度・加速度・電場・磁場
   などは、大きさと向きをもつベクトル量として考える必要がある。
   ベクトル解析は、19世紀末にマクスウェルが電磁気学の体系とともに完成した
   古典的な数学の分野。
   その有用性により電磁気学に限らず理工学の諸分野に広く利用されている。
   無味乾燥な数学の一分野として考えられたのではない。(言い過ぎました)
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2009年12月14日

シミュレーションの思想

以下の書籍を、斜め読みしました。備忘録も兼ねて重要と思った部分を抜粋します。
        
「シミュレーションの思想」
          広瀬 通孝, 田村 善昭, 小木 哲朗 (著)
          東京大学出版会 (2002/10)


・今や(2002年)シミュレーションは科学技術の分野において、その基本的方法論である「実験」的手法のひとつとして、着実に市民権を得ようとしている。
・シミュレーション・シンドロームという問題の所在に代表されるように、そもそも現実世界における実験とは異なったものであり、あくまで計算機内部におけるある種の仮定に基づいた演算の結集であるにすぎないはず。それを盲信することの危険性が、いろいろな観点から指摘されている。
・これだけシミュレーションという手法が一般的になってくると、その方法論自体についてもある種の再検討が必要。その限界について十分な考察を行っておくことによって初めて、大胆な手法の展開が可能なはず。
・ハードウェアを用いた実験それ自体もまた、完全な現実とは異なる人工的な所在にすぎないのではないかという意見も、最近は説得力を持ちつつある。計算機によるシミュレーションと、ハードウェア実験との間に一線を引くことの是非についての議論も多い。たぶん、シミュレーションという技術と現実世界とを対比して眺めることができるほど、両者の関係は単純ではない。
・計算機技術の信じがたいほどの進歩によって、シミュレーションという方法論の重要性はますます増大しつつある。しかし、それだけに、単に便利な手法であるという認識以上のもの、つまりある種の哲学が必要になるのではないか。

・試しに何かやる必要があるか否かは、ある種の価値観あるいは経済的感覚と関連する。成功確率をできる限り高めようとするために最も有効な手段が、「試してみる」ということ。シミュレーションとは、複雑な対象を管理、運営、開発するために必要不可欠な手法である。
・シミュレーションは「本番」に対する「試行」。「試行」は簡単であればあるほどよいが、あまりに簡単すぎて、「本番」において起こるであろうことを予想しきれないのでは困る。反対に本番を完全に二回繰り返すのは、明らかに非効率、不経済。
・何か事を起こすにあたり、あらかじめいろいろな案を試行錯誤することによって、最適案を吟味しておくことは大切なことである。対象が単純なものであれば、何回も実際に試してみることができるが、複雑で高価なものの場合はそうもいかない。
・効率のよい「試行」を行うためには、それが「本番」のエッセンスを含んでいなければならない。それをモデル化という。現実のエッセンスを抜き出し、単純化するということが、シミュレーションの本質であるといってもよいぐらいである。だから、シミュレーションとモデル化は切っても切れない縁がある。実物の持つ本質的な部分のみを抽出して、何らかの形の情報圧縮を行うことによって、実物よりは取り扱いやすく、安価な対象を作り上げる。これがシミュレーションを行ううえでの秘訣。
・シミュレーションとは、実物をそのまま使用しなければまったくモデル化が不可能なほど複雑な状況でもないような問題に対し有効な手法。
・一般に、抽象度を上げれば上げるほど問題は単純化し、解くことは簡単になる。しかし、その一方で現実のディテールが捨象され、真の解答からは遠ざかることになる。したがって、適切な複雑度のモデルを作り上げることが、シミュレーション・エンジニアの腕前となる。
・シミュレーションをどのくらいの精度で実施すべきか。この問題に答えるためには、じつはかなり職人芸的なセンスが要求される。規模すなわちモデルの複雑度はできるだけ小さいほうが望ましい。費用対効果という問題もさることながら、あまり細かいモデル化を行うと小さな誤差の積み重なりによって、精度が低下する場合もある。何がなんでも現実に忠実な構造を有するモデル化が最適というわけではない。シミュレーション技術の本質部分はじつはそこにあるが、それを書物によって伝えるのはなかなか難しい。
・そもそもシミュレーションという手法自体、自己矛盾的な部分を含んでいる。未知の問題を計算機による模擬実験で検討しようとする場合、その答えが正解である保証はあまりない。わかりきった問題であれば正当性を証明できるであろうが、それでは何のためにシミュレーションをするのかわからなくなってしまう。
・現実とシミュレーションの間の境界部分のどこに線を引くべきかは、シミュレーションという体系の中からは答えることができない。これは技術全般についていえる。使いこなす人間の自身の見識によってこの問題を解決していくべき。
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2008年12月13日

複素数とは何で、なぜ必要なのか

ここ数週間,某電子回路設計者向けの数学の本を読んでいました.この本の内容,問題提起としてはいいのですが・・・
電気回路のためのこういった類の,数学者でなくエンジニア(工学者)による数学の本は,絶対必要ですが,わかりやすく丁寧に説明しているようで・・・??? 
何を知らなければならないかを知るためには,良いテキストなのかも知れませんが・・・

人生は短い.この本を読めば,あの本は読めないのである.(ジョン・ラスキン)

お陰様で,フラストレーションから逆に色々調べて勉強にはなりました.
複素数,虚数関連で,インターネットや科学読み物の中でわかりやすかったもの,面白いものを紹介します.


○社団法人 日本電気技術者協会の音声付き電気技術解説講座>理論一般
 http://www.jeea.or.jp/
 ベクトルの手ほどき(1)→ベクトルの手ほどき(2)→複素数の手ほどき(1)→複素数の手ほどき(2)と進むとバッチリです.その他にも
  電気理論なぜそうなるのか(1)(2),「静」電気から「動」電気への橋渡し,LやCの電流が90°遅れ、進みが生ずるのはなぜか,ラプラス変換とその使い方1,2,3,4
など,非常にためになります.

○図解・わかる電気と電子   見城尚志 著(講談社 ブルーバックス)
 「大学の数学のカリキュラムに「複素関数論」というものがある.(中略)このような複素数と電気や物理現象を論じるときの複素数は,同じ意味合いの数だろうか? こういうことは大学では誰も教えてくれない.学生が自分で考えて判断する問題だとされている.ひょっとすると,先生方もよくわからないのかもしれない.」
---これが困るんですよね.
「数学者はどういうか知らないが,筆者の経験では,意味合いが異なるとしたほうがすっきりする.複素関数論の数学現象は,実数に置き換えて議論することはできない.そこでは,実数は複素数の特別な場合あるいは,ある種の極限だとみなされる.ところが,電気や物理の複素数は本質的なものではなく手段であって,かならず実数によっても説明することができるものだ.」
「物理現象を記述するための虚数は本質的なものというよりは,数学的な都合のよさのためである.」

○現実にあるものに虚数を用いる事は - 教えて!goo
 http://oshiete1.goo.ne.jp/qa504875.html
 「ちなみに物理法則としての複素数(量子力学的な状態の記述に複素数が必要)は
便利だからではなく自然がそういう構造=諸性質の間の関係になっているからです。」
                   -----単なる手段だけではない?

○虚数の用途 - 教えて!goo
 http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=1332838

○複素数と平方根の問題(パラドックス?) - 教えて!goo
 http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=1092832

○虚数の不思議 井出 薫
 http://www.idea-moo.net/chi-taiken/ono07031803.html

○数学のいずみ http://izumi-math.jp/ の中から
 「複素数とは何か。伝統的な学校の数学は,昔も今もこの問に答えない。学校で学ぶのは複素数の計算法だけである。ともかくも,複素数はa+bi…(1)という形に書かれる。複素数(1)の意味を明らかにするためには,次の三つの問に答えなければならない。
 i.虚数単位iは条件i^2=−1を満たす。このような数iとは何か。
 A.bとiの積は何か。
 B.aとbiの和とは何か。」
上記の問題の一つの答え
 http://izumi-math.jp/H_Ohyama/c_henkan/c_henkan.htm
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2007年05月03日

SPICE屋の反論

EDN Japan誌4月号p.51〜61「電磁界解析ツール活用のススメ」より


電磁界解析ツールを推奨するあまりに、SPICEは役立たないという論調になっているので、SPICE屋としての突っ込みを矢印(→)以下に入れました。

SPICEの限界
最も大きな問題は、電磁界の影響を正しく盛り込むことができないことである。
→SPICEは回路シミュレータなんだから当たり前です。何を今更。SPICEはキルヒホッフの公式を解くもので、電磁界解析ツールはマックスウェルの方程式を解くものと自分(Paul Rako氏)の記事内でも言ってるでしょうが。

SPICEの問題点
SPICEの問題点は、解析結果の良しあしがモデルの良しあしによって決まることである。
→それはシミュレーション解析という行為すべてに言えることでしょう。

Bob Pease氏(NS)の言葉
「SPICEには何度もだまされたし、明らかに間違っている解もあった。SPICEの結果がどうであれ、それを信じ込むのは良くない。設計者はとにかく頭を使わなければならない。シミュレーションではなく、紙と鉛筆を使うのだ。SPICEの結果が正しいこともあるが、回路がどのように動作するのかについて自分自身で解析し理解しなければ、正しいのかどうかも判断できないだろう。」
→以前紹介したTIの人気シニアエンジニアBonnie Baker氏の言葉を再度載せます。:「シミュレーションは役に立たないという人は、何らかの事情でシミュレータの実力を誤解させられた人。」

Bob Pease氏はカリスマ・エンジニアのようですが、解析ツールを盲目的に使用するなということを言っているのでしょう。この発言を、だからSPICEはダメだという根拠に引用されたのではたまったもんじゃないというのが実感です。

SPICE屋の反論−−まとめ
SPICEシミュレータは、キルヒホッフの法則を使った単なる計算ツールですので、入力された回路図を忠実に解くだけのものです。入力する回路図や使用するモデルが間違っていると、当然正しい結果は得られません。モデルが正しくなければならないことはシミュレータ一般にいえることです。これらの条件が満たされれば、紙と鉛筆を使うよりは正確で速く結果が得られ、見やすいグラフ表示もしてくれます。電磁界のレベルで解析しなければならない場合には、SPICEではなく電磁界解析ツールを使用して下さい。
ひとりでも多くのエンジニアの皆さんにこれらのツールをうまく活用して頂きたいと思います。


Web上のEDN記事抜粋http://www.ednjapan.com/content/issue/2007/04/content02_01.html
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2006年12月02日

「SPICEを効かせる」

EDN JAPAN誌 2006年12月号に大変興味深い記事が出ているので要約を紹介します。執筆は、TIの人気シニアエンジニアBonnie Baker氏です。

要約

回路設計においてコンピュータシミュレーションは大変重要。
アナログ回路:SPICE  ディジタル回路:IBIS  など。
ただし、有効に活用するには以下の注意が必要。
シミュレーションの開始に先立って、その回路がどのように動作するのかという感触を持っておき、シミュレーション結果を鵜呑みにしないで技術的な判断を下すこと。また、モデル/マクロモデルは十分に正確でなければならない。

■シミュレーション活用の利点
1.開発初期に生じやすい誤りの削減
 シミュレータを正確に使用すれば、回路の間違いや勘違いをもの作りの前に検出可能。
2.開発期間短縮
 ・モンテカルロ解析手法などで製品の歩留まり予測が可能。
 ・試作時のトラブルシューティングにも活用可能。
 ・「もし、○○○ならばどうなるか」というアイディアを簡単に試すことができる。

■シミュレータを正確に使用するために必要なこと
 1.シミュレーションの開始に先立って、対象となる回路に期待する動作を明確にしておく。
 2.シミュレーションの完了後、その結果について検証を行った上でもの作りに着手する。

■シミュレーション上での注意点
 アナログ/ディジタル回路両方において、シミュレーション用のモデル/マクロモデルは十分に正確でなければならない。「十分に」とは、モデルは回路の細部にこだわりすぎることなく、デバイスの実際の動作を模倣できなければならないことを意味する。

■「シミュレーションは役に立たない」という人
何らかの事情でシミュレータの実力を誤解させられた。

記事全文は、こちらで。
posted by シムサーキット at 09:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 技術関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする